介護保険制度における保険者が担う仕事内容

 介護保険制度を安定的に維持運営していくには、保険者である市町村だけではなく、国、都道府県、医療及び年金の保険者である各団体が役割分担して、市町村を支援していけるような枠組みが設定されています。

介護事務スタッフは、次に紹介するそれぞれの基本的役割もしっかりと理解しておきましょう。

介護保険の運用主体はどこか?

 介護保険を制度運用している主体団体は市町村になり、介護保険制度上では保険者と言われています。

日本に在住権がある40歳以上の国民は介護保険に強制加入となり、法的に保険料を納める義務が生じ、被保険者として扱われ将来介護サービスを利用する権利も得られることになります。

被保険者より保険料を徴収するのは、保険者である市町村になり、徴収したお金が介護保険の事業運営資金として賄われ、高齢者の介護サービスに充てられます。

市町村が介護保険の保険者となったのは、下記に示す事由に起因しています。

  1. 高齢者が住み慣れた地域で自立して暮らせるようにという介護保険の理念から、市町村が介護給付の主体となり業務を担うことが理にかなっている。
  2. 市町村の財政状況・人口数・人材・産業構造など地域ごとに特性があり、提供される介護サービスの種類やレベルも異なるため、保険料を決定・回収・管理するには、各地域のサービス状況に見合った仕組みにするほうが公平性を保てる。
  3. 地方分権という観点から、住民に一番身近な行政である市町村レベルで担うべきである。

行政における介護保険事業の会計上の扱い

 保険者である市町村が運営する介護保険の財政上の取り扱いは、一般財政とは別枠の介護保険特別会計として区分され財政運営されます。

介護保険運営に関わる市町村単独での全ての決め事は、市町村議会で決定される条例に従って施行される仕組みとなっています。

とは言っても、市町村によっては被保険者となるべく住民数も異なり少人数では、財源や給付額も大きく変動し、保険財政を安定継続できない場合も考えられます。

このような不均衡を無くすために、規模の小さな市町村が集まり共同で、次のような形態で運営することが許されています。

広域連合での運営

 事業全体を広域で運営処理することが実態に即していると判断できるものについて、地方自治法上で認められている特別地方公共団体の一種です。

但し、各自治体が共通して平等公平に運営処理できるための規約を決定し、総務大臣、都道府県知事から承認を得る必要があります。

一部事務組合での運営

 事業の一部を各市町村が共同で担えるための規約を決定し、総務大臣、都道府県知事から承認を得る必要があります。

市町村が担う職務内容

 市町村が果たすべき介護保険法上の主な仕事には次のようなものがあります。

  • 被保険者の台帳策定、保険証の交付・更新管理
  • 要支援・要介護の認定
  • 介護保険給付業務全般
  • 介護サービス事業者の指定・管理監督
  • 地域支援・保健福祉に関わる事業提供
  • 介護保険事業計画の立案作成
  • 第1号被保険者の負担率の設定・徴収・督促
  • 介護保険に関わる条例制定
  • 介護保険運営のための財政に関わる業務

介護保険制度における国・都道府県が担う役割

 介護保険法上では、市町村が保険者となっていますが、上記で紹介した広域連合や一部事務組合の法制度を利用しても、状況によっては次のような事態が想定されます。

  • 財政は規模が小さく安定して継続運営できる保証はない。
  • 要介護認定、保険料徴収、財政運営などの業務は、規模が小さい市町村では難しく支障をきたす場合がある。
  • 保険料について、市町村ごとに大きな差がでる可能性がある。

このような事態を避けるため、国、都道府県、医療保険者、年金保険者が各側面で、市町村をバックアップできるような仕掛けが制度的に設けられています。

具体的には、国、都道府県、医療保険者、年金保険者は役割分担して、主に次のような側面から市町村の事業運営を支えています。

国が任されている業務

 介護保険制度を運営維持していくための規定・基準作りが国が担う大切な主要業務です。

主な業務としては、要介護認定の基準・規定、介護報酬費用や給付限度額、介護サービス事業者の運営基準、第2号被保険者の負担率などを決定し設定します。

この他には、介護保険事業を滞りなく運営できるよう効果的な措置を実施していきます。

都道府県が任されている業務

 都道府県が担う主な業務には、次のようなものがあり、市町村に対して指導・サポートを行います。

  • 事務作業を効率化・合理化したり、財政基盤を安定させるために、市町村同しが連携することに関してサポート支援を行う。
  • 介護サービス事業者の指定や各種許可、指導・助言・管理・監督を行う。
  • 財政安定化基金を設置し運営を行う。

医療保険者が任されている業務

 健康保険組合、国民健康保険組合などの医療保険者は、40歳以上65歳未満の第2号被保険者の介護保険料を徴収します。

医療保険料の徴収時に介護保険料も一緒に徴収した後、社会保険診療報酬支払基金に納めます。

年金保険者が任されている業務

 社会保険庁、共済組合などの年金保険者は、65歳以上の第1号被保険者年への年金支給時に、介護保険料を年金から天引きして徴収し、市町村に納めます。

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